アメリカ英語の発音、イギリス英語の発音・・・ ~英語の方言シリーズ~

英語の発音や訛り(なまり)について、私たちはよく「イギリス英語の発音は綺麗だ」や「アメリカの英語は訛っていない」など、主観的だったり事実に基いていない、ステレオタイプに基づいた発言を耳にすることが多いと思います。

また、それぞれの英語の発音の特徴について説明するときに「アメリカ人はwaterをワラーと発音する!」や「イギリス英語でwaterはウォーツァだ」などに留めて、それぞれの英語を深く説明しない記事を見かけることもあります。

なにがアメリカ英語の発音をアメリカ英語らしくしているのでしょうか?なにがイギリス英語の発音の特徴なのでしょうか?

この記事では、もう少し深くそれぞれの英語の方言について言語学(特に音韻論)の研究に基づいて説明していきます。

みんな訛りや方言がある。

多くの人(特に東京やパリ、ロンドンなど国の中心的な大都市に住む人々)が「私たちは訛ってない」や「僕は方言を喋らない」などと言うかもしれません。

たとえば、東京やその周辺の人々は政治のやメディアの中心地に住んでいて、「私たちは方言を喋らず、標準の日本語を喋っている」や「私たちの日本語は正しいから訛っていない」と言うかもしれません。

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テレビ番組では特定の地方などの訛りを持つ人が笑われていることがる。

また、「BBCの英語は訛りがなくて綺麗」や「パリのフランス語は訛っていないから聞き取りやすい」など言う人もいるかもしれません。

でも、実際にはそれぞれの場所やグループには特有の喋り方があります。日本語の「標準語」も東京などを中心に話される一種の訛り、もしくは方言です。

訛りや方言とは単に、特有な喋り方であって、言語学では「綺麗」、「汚い」や「正しい」、「正しくない」などの主観的な判断をしません。訛りや方言のない言語は死んだ言語くらいです。

世界には様々な英語の方言がある

世界の多くの国や地方で英語が共通語として喋られています。アメリカやオーストラリア、イギリス、インド、カナダ、ニュージーランド、南アフリカなど、数えるのは大変です。各国にはそれぞれ特有の英語の喋り方があるだけではなくて、地方や階級、職業、教育のレベル、ジェンダー、民族、*人種によって英語の喋り方が違うことが多いです。

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世界には様々な英語の方言がある

アメリカ英語の発音

日本はアメリカとの関わりが強いので、アメリカの英語を日本では教えることが多いかもしれません。

もし、学校で先生に「boxはボックスじゃなくてバックスだ」と注意されたのならばその先生はアメリカの英語しか受け入れない人だったのかもしれません。

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アメリカの国土は広く、様々な背景(人種や民族、母語、職業、ジェンダー、教育レベルなど様々)を持った人が暮らしているので、「アメリカの方言はこれだ」と一概には言えません。

なので、ここではアメリカの多くの方言に共通する特徴を挙げていきます。

母音を伴わないRの発音

アメリカの多くの方言では伴わないR (IPA [ɹ̠]) を発音する傾向にあります。たとえば、water, car, butter, bird などのRが発音されます。単語、water の r の後には母音がありません。また、bird の r の後は子音 d があり、母音がありません。

イギリスなどではこのRが発音されない場合が多く、アメリカのRの発音はイギリスでRが発音されなくなる前の時代や、このRが発音されていた地域の英語の影響が強いと説明されることが多いです。

アメリカの方言以外では、カナダやアイルランド、スコットランドなどの多くの地域でこのRが発音されます。alphabet-2051673_1920.png

母音に挟まれたTの発音

アメリカの多くの方言ではTが母音に挟まれた時に、歯茎を舌で弾く音 (IPA [ɾ]) を使います。たとえば、better, matter, water, Peter など。また、settle, kettle, little など。 日本語の「らりるれろ」の音に似てい音です。

短い母音Aの発音

アメリカの英語では cat, hat, mat, basket などの単語の短いAが [æ] として発音されます。[æ]は口を大きめに開けて舌先を低くします。一方イギリスなどではさらに口を開いた [a] の音になる傾向にあります。

[æ]の発音

Oの発音

アメリカの多くの地域では box, hot, dog などの母音Oはイギリスなどの英語と違い、両唇を丸めずに発音されます。カタカナで box をバックスと表記されているのを見かけますが、これはアメリカ英語のO (IPA [ɑ])を日本語の音で表記しようとした結果です。

[ɑ]の発音

 

一口に「アメリカ英語」と言うことは出来ない

母音を伴わないRや母音に挟まれたT、短い母音Aなどの発音はアメリカの多くの方言に共通している特徴です。しかし、アメリカには多様な背景を持つ人々が暮らし、様々な方言があります。

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アメリカには多様な背景を持つ人々が暮らす。

例えば、アフリカ系アメリカ人英語にはアメリカの他の方言ではあまり見られない特徴があります。母音を伴わない R はアフリカ系アメリカ人の英語では発音されないことが多いようです。

また、普段「アメリカ英語」というと、アメリカ全土には同じ喋り方が広がっていると勘違いする人もいるかもしれません。しかし実際には、アメリカ英語は地域によって方言もあります。

アメリカ英語の地方差の一つは、cotcaught の発音の同化と区別です。アメリカ東部の多くの地域では cotcaught の発音の区別があります。そのような地域では cot は [kɑt] と発音され、caught は [kɔt] と発音されることが多いです。

cot の発音」cotcaught の発音の区別がある地域 –

 

 「caughtの発音」cotcaught の発音の区別がある地域 –

 

一方でカリフォルニアなどを含む西部の広い地域では cotcaught は同じ [kɑt]として発音されます。

cot の発音」cotcaught の発音の区別が無い地域 –

 caughtの発音」cotcaught の発音の区別が無い地域 –

Cot-caught merger
緑色の点が cot とcaught が同じ発音の地域。青色が cot と caught の発音が異なる地域。黄色の地域では発音の同化が進行中。By User:Angr [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html) via Wikimedia Commons

イギリス英語の発音

イギリスはイングランドとウェールズ、北アイルランド、スコットランドから成り立つ国ですが、普段「イギリス英語」というと、イングランドのロンドンで喋られる上流階級の英語を指すことが多いです。また、「BBC英語」や「クイーンズ・イングリッシュ」などと呼ぶこともあります。英語では received pronounciation と呼ばれることが多いです。 ここではイングランドの方言を見ていくことにしましょう。

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この方言にはアメリカ方言とは違った特徴が多く見られます。例えば、母音を伴わないRが発音されなかったり、短いAが口を大きく開けた [a] で発音される一方で ask, half, task, can’t などのAは [ɑː] で発音されます。

ロンドンを中心に喋られている英語の方言では母音を伴わないRを発音しない傾向にあります。たとえば、park は [pɑːk]と発音されます。アメリカ英語などで park は [pɑɹ̠k] と発音されます。

この発音の仕方はロンドン周辺で始まり徐々にイングランドの広い地域に広がったといわれています。

近年、イングランドの方言では短いAは口を上下に大きく開けた [a] として発音されます。例として、ant, cat, mat, hat が挙げられます。実際、北米以外で喋られる英語の短いAはこの [a] の発音であることが多いです。

[a] の発音

イングランドにも様々な喋り方がある

しかし、イングランドにも出身や階級、民族、ジェンダーなどの様々な背景によって色々な喋り方があります。アメリカ英語と同様に、「これがロンドンの英語だ」、「これがイングランドの英語だ」と断言することはできません。

まとめ

なにがアメリカ英語をアメリカ英語らしく響かせているのかを知るには、アメリカ英語の音韻論を見ていくと明らかになります。また、世界各地には様々な英語の発音の仕方があります。主観的に「この英語は綺麗」、「この英語は優れている」などと判断するのではなく、「なにがこの方言の発音の特徴なのか」を調べることによって、単なる価値の判断ではなく、方言の特徴が明らかになります。

また、アメリカ英語やイギリス英語と言っても地域や階級、ジェンダー、民族、人種によって様々な喋り方があることを忘れてわいけません。


さらに読みたい方は

弘前大学の教授によって編集されたウェブサイト 英語音韻論 をおすすめします。

また、You Tube にはアメリカ英語とイギリス英語の発音の違いについて説明しているビデオがいくつもあるので、チェックしてみてください。

Forvoというウェブサイトでは検索ボックスに単語を入力し、言語を選ぶと様々な国や地域の発音が聴けます。


参考ウェブサイト

カナダのヨーク大学の教授によって作られたRPの単語リスト IPA付き(http://www.yorku.ca/earmstro/speech/dialects/rp/index.html)

北米の英語の方言を地図化したウェブサイト。北米の英語の方言について知りたいならこのサイトがとても役に立つ。North American English Dialects, Based on Pronunciation Pattern (http://aschmann.net/AmEng/)

IPAの対応する音声はWikipediaから。

“アメリカ英語の発音、イギリス英語の発音・・・ ~英語の方言シリーズ~” への 2 件のフィードバック

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