本物の日本料理? 食文化も変わる

今回のポイントは「文化は変化する」です。文化が変化する例を日本の料理や食文化の中に見ていきましょう。

「伝統」や「文化」が常に変わらないと信じ込んでしまうことがあるかもしれません。また、常にそこに存在していたものを「当たり前だ」と信じ込んでしまうことがあるかもしれません。しかし、文化人類学で「伝統」や「文化」が常に変化し続けていること学ぶことがあるかもしれません。

食に関する文化も例外ではなく、時代の移り変わりや、他文化との接触によって常に変化します。「これが日本の食文化だ」や「日本の料理はこれだ」、「これは本物の日本料理じゃない」といったことを耳にすることがあるかもしれませんが、今、日本の料理として定着している品が昔は新しかったり、違う形をしていたということが多いのです。

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文化は変わる もちろん食文化も

世代が入れ替わるのと、他の文化との交流や相互作用によって文化は変化します。料理は文化の一部なので当然、時代の移り変わりと他文化との交流で変化します。

 

食文化は時代と共に変化する

今日「伝統的だ」と言われている料理さえも50年、100年、500年、 1,000年、2,000年前には新しい料理であったり、今とは全く違う形をしていたでしょう。

例えば、日本の料理の代表として挙げられる「寿司」は今と昔では大きく形も違えば食べられ方(どんな場所で食べるのか、マナーなど)も違います。

現在の日本では回転寿司屋に入って、マグロの握りやエビの握りもあれば、サーモンの握りやいくらの軍艦巻き、アメリカ風の衣をつけて油で揚げられた寿司、アボカドが入った寿司、マヨネーズのかかった寿司など様々な寿司を食べることができます。このように回転寿司では斬新で、創造的なネタを楽しめます。

また、回転寿司屋は「回らない寿司屋」と比べると安めなのと、服装やマナーなどにあまり気を使わずに(家族や友達と)食事を楽しめる場所として機能していることが多いかもしれません。

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では、回転寿司ではなく「伝統的な寿司を食べたい」と言って、いわゆる「回らない寿司屋」に行ったとしたらどうなるでしょう?

アボカドやサーモンの寿司を見ることは無いかもしれません。代わりにマグロの握りやイクラの軍艦巻きが出てくるかもしれません。でも、握りや軍艦は昔の寿司とは違う形をしていて、作られ方も違います。例えば100年前の寿司屋には軍艦巻きは存在しなかったようです。そして200年前には握り寿司はあまり一般的ではなく、500年遡れば「なれずし」と呼ばれる発酵した寿司が食されていたようです。(小島 1999)

江戸時代の寿司の文化についてのページ (外部ページ)

このように、時代と共に料理が変化します。常に形を変えずに存在する料理はなかなか存在しません。

他の文化との接触によって食文化も変化する

日本の料理の中心的な存在である「米」が中国大陸や朝鮮半島から伝わったことは日本に住む多くの人々が知っているでしょう。日本の「おふくろの味」としてよく語られる、肉じゃがに使われる材料は世界各地に起源があります。例えば、ジャガイモはもともとアンデス山脈に育っていましたがヨーロッパ人との交易によって日本列島に伝わりました。(Spooner et al 2005; 南 2004) 日本で食されている豚の多くはヨーロッパ系のようです。また、人参はアフガニスタン周辺に起源をもち、ヨーロッパで現在のような形に栽培化されたようです。(藤田 2004)

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日本の食文化の中心的な存在であるお米でさえ、日本列島の外からやってきた。

また、他文化との接触によって、「何を食べるか」や「何が食べれるか」が変化する事もあります。カレーライスやカツ丼などは日本の文化に関わりがある人々にとっては馴染み深い食べ物かもしれませんが、これらの料理は日本以外の食文化との接触によって食べられるようになりました。明治以前には肉はあまり好まれていなかったようですが、明治時代には西洋社会に入るべく、欧米の食文化を真似て肉食が進められたようです。(南 2004)

寿司の例に戻ってみると、現在、日本の回転寿司屋ではアメリカ風なアボカドの入った寿司や衣をつけて揚げられた寿司を食べることができます。これも文化がお互いに影響しあった結果です。zpUL4jgVTyQht9VxBHWdMQjAEy0MihoS68XuBLGQ

まとめ

日本の料理と食文化を例に、変わらず常にそこにあると信じられている「伝統」や「文化」は実際には常に変化し続けているという事が見れたでしょうか?変化は時間の経過や環境の変化、他文化との接触によってもたらされます。また、現在の「伝統」も昔は違った形をしていたり、当時では新しかったのです。文化人類学たちは文化を「常に変化するもの」として扱います。これを機に、普段見過ごしている「当たり前」を見つけてみてください。


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参考文献

Spooner, D. M., et al. “A Single Domestication for Potato Based on Multilocus Amplified Fragment Length Polymorphism Genotyping.” Proceedings of the National Academy of Sciences, vol. 102, no. 41, Mar. 2005, pp. 14694–14699., doi:10.1073/pnas.0507400102.

江戸の外食文化|「江戸前寿司と醤油」|江戸時代の醤油文化| 日本食文化の醤油を知る http://www.eonet.ne.jp/~shoyu/mametisiki/reference-3.html

小島 朝子 “馴れずし 一滋賀県の馴れずしを中心に一” 日本調理科学会誌 32 3 1999 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10814056?tocOpened=1

藤田 智 “恵泉野菜の文化史(2) ニンジン” 恵泉女学園大学 園芸文化研究所報告 園芸文化 第2号 2004 http://www.keisen.ac.jp/extension/research/gardening/engeibunka/engeibunka02.html

南 直人 “日本における西洋の食文化導入の歴史” 国際研究論叢 : 大阪国際大学紀要 / 大阪国際大学 編 2004 http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I7163284-00

 

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